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Tenon 嚢移植による漏出濾過胞再建術

2008年4月30日 水曜日

———————————————————————-Page1(135)???0910-181008\100頁JCLS《原著》あたらしい眼科25(4):557~560,2008?はじめに濾過手術,特に線維柱帯切除術に線維芽細胞増殖阻害薬の5-フルオロウラシルやマイトマイシンC(MMC)が併用されるようになり,術後の眼圧コントロールはそれ以前に比べ飛躍的に向上した1,2).その一方で,胞状の菲薄化した無血管性の濾過胞が形成されやすくなり,濾過胞からの漏出をきたす症例が散見されるようになってきた3,4).漏出濾過胞は濾過胞感染,眼内炎,低眼圧黄斑症などの重篤な合併症の原因となる可能性があり,その対処法が必要とされ報告されてきた5~10).房水産生抑制を含めた内科的な治療や自己血清の点眼,自家血の結膜下注射はその効果の持続性に問題があり,近年,羊膜を用いた修復術が報告されはじめている11)が,羊膜の準備,移植羊膜の安全性などから日常臨床で普及するまでには至っていない.また,保存強膜を用いた修復術では術後眼圧コントロールの問題などが指摘されており,より簡便で安全,確実な手技の開発が求められている.今回筆者らは漏出濾過胞に対してTenon?を用いた再建術を行い,良好な結果が得られたのでその効果について報告する.I対象および方法症例は5例5眼で男性4例,女性1例,年齢は平均67歳(58~77歳)である.緑内障の内訳は原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,閉塞隅角緑内障が各1眼,ぶどう膜炎による続発緑内障が2眼であった.術式は全症例にMMCを併用し,非穿孔性線維柱帯切除術が4眼,線維柱帯切除術が1眼であった.濾過胞漏出の際,すべての症例に眼圧3mmHg以下の低眼圧があり,濾過胞炎が1眼あった.低眼圧黄斑症を生じた症例はなかった.濾過胞漏出からTenon?移植手術までの平均日数は401日(3~784日)であった.術後の観〔別刷請求先〕山内遵秀:〒903-0215沖縄県中頭郡西原町字上原207琉球大学医学部高次機能医科学講座視覚機能制御学分野Reprintrequests:??????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????-?????????????-????????????-???????-???????????Tenon?移植による漏出濾過胞再建術山内遵秀*1.2澤口昭一*2江本宜暢*1中村裕介*1小林和正*1湯口琢磨*1海谷忠良*1岩田和雄*3*1海谷眼科*2琉球大学医学部高次機能医科学講座視覚機能制御学分野*3新潟大学TenonCapsuleTransplantationforRepairofLeakingFilteringBlebYukihideYamauchi1,2),ShouichiSawaguchi2),YoshinobuEmoto1),YusukeNakamura1),KazumasaKobayashi1),TakumaYuguchi1),TadayoshiKaiya1)andKazuoIwata3)?)?????????????????????)????????????????????????????????????????????????????????????????????)?????????????????????目的:マイトマイシンC併用線維柱帯切除後の漏出濾過胞に対して濾過胞修復のために行ったTenon?移植術を報告する.方法:晩発性濾過胞漏出がある5例5眼を対象としてTenon?移植を行った.結果:3眼は術後翌日に,1眼は術後2週間目に,1眼は再手術後3週間目に濾過胞からの漏出が消失した.結論:Tenon?移植は簡便で漏出濾過胞の修復に有用であった.WereportsubconjunctivalTenoncapsuletransplantationtorepairleakingblebsafterprevioustrabeculectomywithmitomycinC(MMC).Subjectsofthisreviewcomprised5eyesof5patientswithlate-onsetleakage.Ofthe5eyestreated,leakageceasedin3eyesbythenextday,in1eyeby2weeksafterthe?rstinterventionandin1eyeby3weeksafterthesecondtransplantation.Tenoncapsuletransplantationisasimpleande?ectivemeansofrepairingleakingblebs.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(4):557~560,2008〕Keywords:緑内障,線維柱帯切除術,マイトマイシンC,漏出濾過胞,Tenon?移植.glaucoma,trabeculecto-my,mitomycinC,leakingbleb,Tenoncapsuletransplantation.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(136)た.術後の観察期間は平均8.8カ月(4~10カ月)と短いものの再漏出を認めず,眼圧は最終観察時で4~14mmHgであった(図2).典型的な症例と再手術例を提示する.〔症例1〕58歳,女性.平成8年に近医で原発開放隅角緑内障と診断され,聖隷浜松病院眼科を紹介受診した.眼圧コントロール不良のため,同年に右眼,ついで左眼にMMC併用非穿孔性線維柱帯切除術を施行した.平成10年より海谷眼科に転院し,眼圧は両眼8mmHgと良好であったが,平成16年(術後7年11カ月)に右眼濾過胞より房水の漏出が出現した.所見:視力は右眼0.15(矯正0.2),左眼は1.2(矯正不能).眼圧は右眼2mmHg,左眼8mmHgで,両眼とも血管に乏しい菲薄化した濾過胞であり,右眼の濾過胞からは房水の漏出を認めた.前房は深く,炎症性細胞はなく軽度白内障と軽度の虹彩後癒着を認めた.低眼圧黄斑症や脈絡膜?離は生じていなかった.視神経乳頭陥凹/乳頭比は0.9,視野は湖崎分類Ⅲaであった.経過:血清点眼を開始したが,濾過胞からの漏出改善を認めなかった.平成17年10月(濾過胞漏出から9カ月)に察期間は平均8.8カ月(4~10カ月)である.手術方法は図1に示す.まず上直筋に4-0シルクの制御糸をかけ十分に下転させる.菲薄した結膜より円蓋部側に濾過胞に沿って結膜切開を行う.結膜剪刀で結膜と強膜を瘻孔部位に向かって?離していく.その際,結膜を損傷しないように慎重に行う.結膜の瘻孔部位まで?離できたら,結膜切開部の円蓋部側よりTenon?を採取する.Tenon?は結膜瘻孔より大きめに採る.5眼中4眼は採取したTenon?を強膜の上に広げ,それが結膜瘻孔部位にあたるように結膜をかぶせて結膜切開創を丸針付き10-0ナイロン糸で3カ所端々縫合しその間を連続縫合した(図1).この4眼のうち強膜弁からの房水漏出が多かった1眼は強膜弁の耳側と鼻側を丸針付き10-0ナイロン糸で端々縫合した後Tenon?を移植した.また結膜を強膜から?離している際に元々の結膜の瘻孔部が拡大した症例も1眼あり丸針付き10-0ナイロン糸で瘻孔のある結膜を1針端々縫合した後,上記と同様にTenon?を結膜下に挿入し切開した結膜創を縫合した.5眼中1眼は強膜弁が融解しており結膜を強膜弁から?離した際房水が過剰に漏出してきたため,Tenon?を強膜弁の上に広げその耳側,鼻側に丸針付き10-0ナイロン糸でTenon?を強膜に固定した後,結膜をかぶせ結膜切開創を上記同様に縫合した.漏出部の結膜は非常に薄く縫合により新たな瘻孔ができる可能性を考慮し,移植したTenon?と結膜の縫合は行わなかった.II結果Tenon?移植による漏出濾過胞の再建術を行い5眼中4眼が初回手術で房水の漏出が停止したが,1眼は手術翌日より別の部位から房水の漏出を認めた.改善をみないため再手術を施行し,漏出は停止した.眼圧は全例術後3カ月まで抗緑内障薬を使用せずに4~14mmHgにコントロールされた.漏出が消失するまでの期間は3眼で手術翌日に,1眼で2週間目に,再手術の1眼は再手術後3週間目であった.再手術を必要とした症例は術中結膜?離の際に瘻孔ができた可能性があるが,その他の4眼は術中,術後に合併症を認めなかっ結膜切開線Tenon?濾過胞瘻孔abcde図1手術方法a:菲薄した結膜より円蓋部側で結膜を切開する.b:結膜剪刀で結膜を強膜から?離する.c:円蓋部側よりTenon?を採取する.d:採取したTenon?を強膜上に広げ瘻孔部にあたるように結膜をかぶせる.e:結膜切開創を丸針付き10-0ナイロン糸で縫合する.図2術後の眼圧変動最終観察時には全眼圧14mmHg以下でコントロールされている.NTG:正常眼圧緑内障.———————————————————————-Page3———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(138)with5-?uorouracil.???????????????(Copenh)72:455-461,19912)KitazawaY,KawaseK,MatsushitaHetal:Trabeculec-tomywithmitomycin;acomparativestudywith?uoro-uracil.???????????????109:1693-1698,19913)Green?eldDS,LiebmannJM,LeeJetal:Late-onsetblebleaksafterglaucoma?lteringsurgery.????????????????116:443-447,19984)DebryPW,PerkinsTW,HeatleyGetal:Incidenceoflate-onsetbleb-relatedcomplicationsfollowingtrabeculec-tomywithmitomycin.???????????????120:297-300,20025)山本哲也,北澤克明:線維芽細胞増殖阻害薬を併用するトラベクレクトミー:その光と陰.眼科37:39-46,19956)FitzgeraldJR,McCarthyJL:Surgeryofthe?lteringbleb.???????????????68:453-467,19627)SugarHS:Complications,repairandreoperationofanti-glaucoma?lteringblebs.???????????????63:825-833,19678)WilsonMR,Kotas-NeumannR:Freeconjunctivalpatchforrepairofpersistentlateblebleak.???????????????117:569-574,19949)BuxtonJN,LaveryKT,LiebmannJMetal:Reconstruc-tionof?lteringblebswithfreeconjunctivalautografts.?????????????101;635-639,199410)木内良明,梶川哲,追中松芳ほか:房水が漏出する濾過胞(leakingbleb)の再建術.眼科39:667-672,199711)KeeC,HwangJM:Amnionicmembranegraftforlate-onsetglaucoma?lteringleaks.???????????????133:834-835,200212)MatoxC:Managementoftheleakingbleb.???????????4:370-374,1995で濾過胞からの房水の再漏出の阻止に成功している.最終観察期間までに1眼で眼圧が14mmHgまで軽度上昇しているが,眼圧コントロールへの悪影響はほとんどみられなかった.また自己組織のため特別な装置や準備は必要なく,しかも術式は非常に容易であり再手術も可能であることから今後多施設での検討が待たれる.Tenon?を用いた漏出濾過胞の治療はFitzgerald6)やSugar7)の報告がある.彼らは管錐術(強膜全層と線維柱帯を切除)術後の漏出濾過胞に対して有茎でのTenon?移植を行っている.Sugarは術後5眼すべてで漏出が停止したと述べているが,2眼は眼圧が再上昇し点眼加療が必要であったと述べている.移植されたTenon?模